そんな注意を、同人活動を行うなかで今まで一度は耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。
あるいは、注意する側だった方もいらっしゃるかもしれません。
古のオタク女子にとっては当然のこととして浸透していたこのスタンスですが、最近ではあまりピンと来ない方も増えてきているように思います。
ある程度は仕方のないことかもしれません。
だって時代が違うもの。
「コミケとか、あれだけ一般人にも浸透してるのに?」
「オタクとか今はその辺にいっぱいいるじゃん」
「悪いことしてるわけじゃないのに、なんで隠れてやらないといけないの?」
かつては「日陰者の趣味」とされ、偏見の目に晒されてきたオタク趣味。
アニメやマンガを嗜んでいる、というだけで肩身が狭く、ましてその二次創作な同人趣味など、到底人様に公言できるようなものではなかった…。
そんな時代もあったのです。
アニメ・マンガ文化が一般人にも広がるにつれ、オタク人口も爆発的に増えました。
今やオタクは珍しいどころか多数派になりつつあります。
2017年時点で「日本人の5人に1人がオタク」、2030年には「3人に1人がオタクとなる」…という研究結果すらあるほど。
コスプレをはじめ、コミックマーケット(コミケ)などの同人文化やイベントの知名度も右肩上がり。
オタ活や推し活は市民権を得て、白昼堂々楽しそうに活動できているのに…。
実に自然な疑問だと思います。
が、同人活動(二次創作)には、他のオタ活と異なるグレーな面があるのです。
そもそもなぜグレーなのか。
それは「著作権」を侵害する可能性があるからなのです。
「著作権」という権利
同人(二次創作物)は、原作あっての作品です。
他人の創造性に乗っかって繰り広げた妄想を出力した物体が同人誌、あるいは同人グッズなどの二次創作物。
創造性には著作権が発生します。
これは一次創作でも二次創作でも同じ。
一次創作者(原作)の著作権の方が強いのは自明の理。
著作権者のお許しがない場合、つまり、
著作権者が「二次創作を禁止する」という声明を公式で発している場合、
二次創作物(同人誌・同人グッズ)の頒布自体がアウトです。
こっちがぶちのめされます。
具体的に言うと権利侵害で訴えられます。
裁判になったら最後、確定で負けます。
約束された敗北の裁判です。恐ろしいですね。
新品中古有料無料関係ありません。頒布すると処されます。
厳しめの版権は、ネット上にもまとめられていますので、ご参考までに。
参考外部リンク(Pixiv:二次創作ガイドライン)
…とはいえ、見逃してくれているところがほとんどです。
同人界隈での盛り上がりは原作の売上に影響する面もあります。
「ファンがタダで勝手に宣伝してくれている!」という見方ですね。
なので余程のことをやらかさない限りは、見逃してくれています。
そこのあたり、詳しく調べてみました。
許されないラインBEST 4
訴訟されかねない余程のことリスト
1.公式を騙る
2.公式と誤解を招く作品の頒布
3.原作イメージを著しく悪化させる
4.儲けすぎる
1.公式を騙る
二次創作物なのに公式だと言い張る、あるいはオリジナルだと主張して世に出す。
これはもう純然たる権利侵害です。
絶対アカン。論外。海賊版と同じ。
漫画村の運営者が17億の賠償判決を受けたニュースは記憶に新しいですね。
2.公式と誤解を招く作品の頒布
悪意があろうがなかろうが、結果的に勘違いされかねないものを作るのは危ういです。
権利者がアカン判定したらおしまいな業界。それが同人(二次創作)界隈。
なので多くの同人誌では、注意書きに「この作品は原作とは一切関係ありません」と明記されています。
「自分、公式じゃありません!権利侵害してませんよ!」という潔白証明なわけです。
絵柄を原作に寄せすぎたり、装丁やデザインを単行本そっくりにしたりというのも、公式勘違いのリスクが上がる要因です。
「野生の公式」と持て囃される反面、たまに厳しいファンが怒っていることがあるのは、そういう事情があるからだったりします。
二次創作を知らない人に「公式勘違い」をされ、それが大事化してしまうと、頒布した同人作家自身はもちろん、最悪の場合は同人界隈全体が萎縮することにもなりかねません。
なので、やはり節度を持った活動が必要なのだと思います。
同人誌を頒布する際には万が一を考えて、わかりやすい場所に『二次創作物』だとわかるよう記しておきましょう。
3.原作イメージを著しく悪化させる
イメージ毀損とは、原作や原作キャラクターのイメージを壊すこと。
早い話が“過度な解釈違い”です。
特にその作品や企業などの『顔』になっているキャラなどは、キャラクターのみならず、その版権や企業のイメージすら左右する象徴だったり広告塔だったりするわけです。 例えば、そんなキャラが勝手に暴力的な作品に使われたり、政治的な宣伝(プロパガンダ)に使われたりして、広く一般の人にまで知れ渡ってしまうとどうなるか。 「子どものアイドル的なキャラクターなのに、実は裏でこんな悪いことをしてるんだ」 「この版権(企業)は、特定の思想を支持しているってこと?」 …などという誤解にも繋がります。
版権キャラクターは権利者にとって財産です。
イメージ悪化に繋がるような表現などが広く一般に浸透してしまうと、版権作品そのものや企業に取り返しのつかないダメージを与えかねません。
大抵の権利者は、同人誌で多少キャラがアレな扱いを受けていようが、同人誌のストーリーが原作のテーマからズレまくっていようが、「原作とは別モノだし」という前提のもと、お目溢ししてくれています。
- あくまでファンアート
- 個人の妄想を形にしたもの
- 原作の設定のキャラは出ているが、原作のキャラとは別人、別の世界線の話
- 己の解釈が公式と解釈違いでツラい
…前提として、これらの見解は同人オタクの共通認識となっています。いるはずです。
そのあたりを『わかってやっている」分には問題がない、としている版権は多いです。
しかしながら、限度はある。
同人誌がお目溢しされているのは、アングラコンテンツの域を超えていないからです。
パチモンはパチモンとして、身の程を弁える必要があります。
有名になりすぎたり、版権者が看過できない(原作に影響を与える)レベルにまで広まって影響力を持ち始めたりすると、版権者は公式を守るために二次創作を制限せざるを得なくなります。
原作を知らない人にまで変なイメージがついてしまうと、先入観で作品を見られたり、作品自体を嫌厭されたりと、原作に悪影響があるからです。
「一般の目を避けてコソコソやりましょうね」と言うのは、そういう微妙なパワーバランスを考慮してのこと。
加えて言うと、イメージ悪化に超絶厳しい版権もあります。
上で紹介した著作権に厳しい版権などがまさにそう。
- 実在する人物や固有名詞を持つ対象(いわゆるナマモノ)
- 中の人がいるキャラクター(Vtuberなど)
- 国民的、大衆化した作品のキャラクター
- 子ども向け作品のキャラクター
アイドルなどの「実在する人物」については、界隈でも「ナマモノ」としてデリケートに取り扱われてきた歴史があります。
空想上のキャラクターなら、物を盗ませようが人を◯させようがある程度は「フィクションなんで!」で済まされますが、実在する人の場合はそうはいきません。
不用意な描写や表現が、侮辱罪や名誉毀損に直結します。
例えばウマ娘のキャラクターも、人ではありませんがモデルとなった馬が実在し、それぞれに馬主がいます。
コンテンツの版権元がそもそも馬主の許可を得てキャラクターを借りているのです。
馬主にとって、名を馳せた馬は英雄です。誇りであり、家族です。
そんな馬の名を冠するキャラクターが侮辱されるような描写は、二次創作物であっても到底受け入れられるはずもなく。
ガワは設定含め創作ですが、中で演じているのは生きている人間です。
彼らも人気商売ですし、ある程度の表現はファンアートの一つとして受け入れてくれるでしょう。
しかし、あまりにも酷い表現や元のキャラとかけ離れたイメージ、主義信条など持たせると、抗議を受けることは必至。
過去、一般人からの通報により同人作家が逮捕されたことが実際にありました。
ポケモンキャラクターを使ったアダルト漫画の同人誌を頒布した同人作家が、「ポケモン」のイメージを壊す内容を描いたとして著作権法違反で逮捕された事件です。
(詳細外部リンク:「Wikipedia」ポケモン同人誌事件)
まだ警察などに二次創作(同人)がよく知られていなかった、という時代的な背景もありますが、任天堂の公式見解として「一律にここからここはセーフ・アウトではなく知的財産の品格や価値がおとしめられない表現かどうかが一つの判断点となる」とのコメントが出されています。
もう一件、『のび太のバイオハザード』という二次創作フリーゲームの著作権問題がわかりやすいので、例として紹介しておきます。
二次創作フリーゲーム『ドラえもん のび太のBIOHAZARD』(略称『のびハザ』)動画削除騒動
個人製作のフリーゲームとして無料配布されていた『のびハザ』のプレイ動画が、権利者の申し立てにより一斉削除された事例。
『のびハザ』は、キャラクターはドラえもんから、ストーリーの大筋やネタはバイオハザードから、ほぼ流用されている複数版権ごった煮状態の作品で、公式ロゴや版権音源まで使用されていた。もちろん、どちらの版権の使用許諾も得ていない。
それでいて作品の演出ではグロテスク表現が多用に使われており、キャラクターの悪役化など設定も大幅に改変されている等、イメージ毀損の面でも色々と問題の多い作品だった。
2005年の『のびハザ』初版公開から10年以上経った2018年9月下旬ごろ、とうとう版権元(小学館)からの申し立てにより関連動画が一斉に削除され、作者も自発的に作品の公開・配布を取り下げることになった。
多額のコストを押してまで版権元が強制削除に踏み切った理由は、
①コンテンツ肥大化による大衆化
②プレイ動画による利益の発生
③検索エンジンが提案する「ドラえもん」関連ワード・動画(サジェスト)に、『のびハザ』が頻繁に表示されるようになった
…の3点が大きかったのではないかとされる。
権利者である小学館は、削除申し立て後に『のびハザ』を良しとしない意思を表明しています。
- 知る人ぞ知るアングラコンテンツだったので、一般知名度は低かったから
- 作った人が『のびハザ』で全く稼いでいなかったから
版権元は削除権限を持っていますが、実際に削除するには多額の費用がかかります。
だからこそ、良くは思っておらずとも規制まではされておらず、半ば放置されていたのです。
子どもが「ドラえもん」で検索した動画一覧にすらポンポン表示されるようになってしまったので、小学館も重い腰を上げざるを得なかった、ということですね。
初版の配布開始から10年以上が経って、突然規制が強化されたあたりからもそれが読み取れるかと思います。
ここで最後の「儲けすぎる」というファクターについて触れておきます。
4.儲けすぎる
二次創作(同人)がお目溢しされているのは、それが『原作の宣伝』になっている側面があるからです。
普通に宣伝をすると、かなり高額な広告費がかかります。
お金を払って頼まなくても、ファンがファンアートを量産して周りに広めてくれるので、版権者としてはありがたい面もあるのです。
そうなると今度は「使いたいならロイヤリティ払えよ」となるわけですね。
宣伝効果分浮いた広告費 < 版権使用代(ロイヤリティ)として徴収できただろう金額
こう版権者が考えられるくらい稼いでしまうと、訴えられたり、規制されたりする確率が上がります。
女性同人界隈で同人誌を頒布する際の暗黙ルール、データ販売NG、完全受注販売NGは、版権元からの「二次創作で儲けすぎ判定」を警戒するがゆえにあります。
『同人誌頒布で利益を出すべからず』と言われる理由の根はここです。男性界隈はたまにデータで売られてるのを見るのでどうだか知りませんが。(概ね女性界隈の方が、ルール意識が厳しい傾向があります。)
同人誌(紙)で頒布するからこそ、
「印刷代などの経費分だけお金を取って頒布しています!」
「儲け目的じゃありません!」
「これは非営利のファン活動です!!」
…という言い訳が通るという理屈です。
(なので、何も知らないでうっかり有料データ頒布などすると他ファンからボコボコにされます。)
完全受注販売がNGとされるのも、理論上「頒布数が分かれば確定で儲けが出せる」から。
「そのあたりの細かい勘定は頒布者の自己申告なので外部から見て信用ならない」とか、「同人誌は皆赤字リスクを取って出してるものだ」という慣習的な弊害とかあるかもしれません。
『のびハザ』作者は『のびハザ』をフリーゲームとして無料配布していました。
儲けはゼロです。
だからこそ権利者も「あの表現はちょっとなぁ…」と思いつつ放置していたのでしょう。
が、「動画広告による収益化」という儲け方が一般化してくると話が変わってきます。
『のびハザ』作者は儲けていなくとも、『のびハザ』のプレイ動画を上げた一般人が広告で稼ぐようになったのです。
ここで『動画拡散→大衆化』という負のスパイラルが生まれてしまいました。
そういうわけで『のびハザ』はスリーアウトが完成し、バッターアウト。
訴訟までされなかったのは、作者自身が3つめの地雷(収益化)を踏んでいなかったことと、権利者からの削除要請に素直に従ったからだと考えられます。
まとめ
【同人アウト4大項目】
1.公式を騙る(絶対アカン)
2.公式と誤解を招く作品の頒布
3.原作イメージを著しく悪化させる
4.儲けすぎる
ここまでグダグダと説明してきましたが、結局のところ『公式がNG』と言ったらダメ。
なので同人は公式のお目溢しの範囲内で楽しみましょう、ということが前提になります。
そんなお目溢し条件の最重要ポイントが、『知名度が高くなりすぎない』こと。
NGポイントは複数ありますが、公式から「アカンで!」という表明がされていない限りはどこまでがOK!というラインがあやふやです。
上記のアウト項目や公式のガイドラインに違反していても、放置されている同人作品や頒布者もそれなりに存在します。
しかし、全公式がアウト判定を行う引き金になる重大ポイントが『知名度が高くなりすぎる』ことです。
というわけで、同人活動(二次創作)の鉄則として『隠れてコソコソやること』が挙げられているわけでした。
元々がお天道様の下でデカい顔をして、「見て見て〜!!」と大声で触れ回れる趣味ではない。
これはオタク趣味や推し活がメジャー化されても変わりません。
むしろメジャー化してきたからこそ、一段と気をつけなければいけない部分でもあります。
「公式を盛り立てるファンアート」から「他人の褌で相撲を取っている権利侵害作品」になってしまわないよう、節度を守って楽しみましょう。
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